自分が加わっていない他人の何気ない会話で、異様に印象に残るものがあります。
ざわついた場所で雑音にしか聞こえない会話の中で、あるメッセージが際立って「聴こえた」現象は、「カクテルパーティー効果」と呼ばれますが、これは聴いていた本人の選択的注意に依るものなので、ここでは採り上げません。
上島竜兵さんの『豆しぼり』がわたくしの家庭内で流行していた際、妻と行ったざわつく東急ハンズで、知らないおばさんが売り物の手ぬぐいの前で「あらこれ、豆しぼり…」とボソッと言った音を聴いた妻とわたくしのふたりで「ムムムッ!」となったことは、ここでは採り上げません。
仕事中に他人の会話が聞こえてきて、いまでも印象に残っているもののなかに、
「オオイシ(仮名)、アイツ全部の髪の毛が同じ長さなんだって」
「えっ、そうなの?」
というものがあります。
「全部の髪の毛が同じ長さ」というシンプルながらも趣のある面白さと、「えっ、そうなの?」というリアルかつ正方向のリアクション。そして、その場にいないのに髪型を話題にされているオオイシさん。さらにいうと、「わざわざそんな話する?」という、そもそもの会話に対してのメタ的なツッコミどころもあります。
分析すればするほど面白いのに、自分は加わっていない会話であるためただただ「ツッコミたい…!」と悶々とするわたくし。消化できないことが多いがゆえ、印象に残り続けているのかも解りません。