アイデンティティはレゾンデートルへ

別のチームで仕事をしているNさんは、いつも昼食にカップラーメンを食べているので、わたくしたちはひそかに「カップラくん」と呼んでいました。丸っこくてめがねをかけていて、人の良さそうな見た目です。「カップラくん」というアダ名がしっくりくる感じ。

カップラくんは、そのチーム内でも「今日はなんのカップラーメン食べてるの?」と言われていたので、そのアイデンティティはユニバーサルなものと推測されます。
ある日におにぎりを食べていたカップラくんは、「あれっ? 今日はカップラーメンじゃないの?」と言われていました。カップラくんはそれに対し、「今日はおにぎりと……、カップラーメンです!」と“タメ”を使いデスクの下のほうからスポンとカップラーメンを取り出してしました。「自分にはなにを期待されているのか?」も解っていると思われます。内外ともに認められるアイデンティティ。もはやレゾンデートル。それは言い過ぎか。

そんなカップラくん、今日はお弁当屋さんで購入したと思われるお弁当をデスクに広げていました
わたくしは「あれっ、お弁当は珍しいな…」と思いつつ、広げられたお弁当から視線をカップラくんに移しました。

あっ、ワイシャツのお腹あたりをシミ抜きしてる…!

めったに食べないお弁当だったからか、手元がアレしちゃって不意の汁飛びでもあったのでしょう。濡れティッシュを用い、ワイシャツのお腹あたりを高速で叩いています。しかし、周囲にはそのチームの誰もいません。孤軍奮闘。

6人席の島の中央で丸い背中をますます丸め、食べかけのお弁当を前にひとり高速シミ抜きをするカップラくん。これは切ない…。

「慣れないことするから…」
そう思ってしまうのは、やはりカップラくんの「カップラーメンを食べる」というアイデンティティが、もはやレゾンデートルの域に達しているからなのでしょう。

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