友人オススメの本ですから、手に取るのは自然です。
19世紀末フランスの本を20世紀中頃に翻訳したもので、群集の考え方や行動、教育や政治や宗教などが論じられています。
わたくしは翻訳本は非常にニガテで、この本も読むのに苦労しました。しかも翻訳した時代も古いので、翻訳の翻訳が欲しかったです。何を言っているのか解らないところも多く、細かいところは読み飛ばしてしまいました。
とはいえ、著者が前述の群集に関するあれこれを論じていること自体はうなずけるところが多く、いわゆる「衆愚政治」「メディアの扇動」などに警鐘を鳴らす点は、100年以上前からまま見られていたことなのだなと痛感しました。
個人が群集になると判断力や推理力が劣化し感情への訴えかけに異様に呼応してしまい、国政選挙において、それは普通選挙ではなく上位階級のみの制限選挙としても同じ結果となる、との見解には、なるほどなと思いました。どんな人間であっても、人間であれば、集まるとばかになっちゃう。群集を操るためには、断定型の短い言葉で、感情に訴えかけるのがよいそうです。思い当たりすぎる。
ただ、「じゃあなんでそうなるの?」という点は、明確に書かれていないように感じました(わたくしが読み解けてないだけかも)。数々の事実を積み上げて、「群集は愚かなり」と結論づけています。そうなるメカニズムについては、あとの時代で考察されていることでしょう。
しかしながら、群集だからこそ無謀に思えることに挑戦し、困難を克服できた(文明の勃興など)とも書いてありましたね。
読みづらさはありましたが、内容はおもしろかったです。ご興味があるかたはどうぞ。