幼少時は冷めていたと思います。
たとえばテレビ番組において、アニメなどの完全なファンタジーであれば楽しんで観ることができたのですが、特撮モノなんかは「中途半端な現実感」が気になってしまい、観ることはありませんでした。
街が破壊されたとしても、翌週には元どおりになっていることの違和感。でもこれは実写だから、送り手は事実として表現しているハズです。リアルに寄せるのであれば、徹底的にして欲しかった。
当然すべてはフィクションなので、いま考えると幼少のわたくしが虚構と現実をごっちゃに考えていたのですが。
そんなわたくしですが、「月にうさぎがいる」というのは本気で信じていました。
月にはたくさんうさぎがいて、みんなで餅をついているのです。楽しそう。
幼稚園児のころだったと思います。わたくしは母親に「月ってうさぎさんがいるんだよね」と話し始めました。
わたくし「月ってうさぎさんがいるんだよね〜、おもちついてるの」
母親「いないよ」
わ「えっ…」
母「月には空気がないの。だから気温の変化も激しくて、昼は灼熱で夜は極寒」
わ「」
母「だから、月にうさぎはおろか、生き物はまったくいないのよ」
母親は、なにも間違っていない。観測されている事実を述べているだけです。
わたくしは何を話しているのだろう。地球の外の宇宙空間は激しい環境であり、生物の存在は確認されていないのです。常識じゃないか。幼稚園児であっても知らないはずがないだろう。
わたくしはただ、幼稚園児らしく母親に甘えたかっただけなのかも解りません。「そうだった、世界には事実と現実しかないんだ」と改めて思い直した幼少のわたくしは、エリをただしました。
虚構の溢れるこのクソッタレ社会に埋没した事実と現実を、わたくしは見抜いていかなければならないのです。この、より冷めた目で。そう、特撮モノを観るような目で。
幼稚園児くらいの我が子に、母親は世界のたいせつなことを教えたのです。
早すぎな気がするけど。
やがて現実を見ることに疲れた大人のわたくしは、休日に12時間とか寝て現実逃避するようになったのです。あと「うんこ」とかもよく言う。