【本】#025 行動経済学 経済は「感情」で動いている / 友野 典男

行動経済学 経済は「感情」で動いている
行動経済学 経済は「感情」で動いている

本書を開いたところ、「感情」と「勘定」をかけている一文があったので、手に取るのは自然です。

いわゆる「経済学」は、自己の利益のみを考え、すべての行為行動に合理的説明がつく「合理的経済人」によるものであることを前提としています。
例えば、ある商品を購入しにショッピングセンターに入った際、「合理的経済人」は数十万もの商品の価値を瞬時に判断し、もっとも目的にかない費用対効果に優れたものを迷わず手に取ります。「経済学」はそれを前提としているそうです。
しかしわたくしども人間は不完全です。そんなことができるわけがありません。そこで「行動経済学」の出番ということになります。

本書では、数々の実験やゲームを例に挙げ、人間の取る行動がいかに「経済的でない」かを論じています。むしろ、その「経済的でない」行動を前提とした上で「経済学」を組み立てたほうが、現実的であると考えられます。
わたくしども人間は、リスクとリターンが同じ価値であってもリスクのほうを過大に見積もったりしますし、楽しみにしていた1ヶ月後の旅行があさってくらいに迫ると急に面倒くさく思ってきたりします。これらのバイアスが、まさに「行動経済学」ですね。
また、人間はすべてを瞬時に正確に計算できない代わりに、「ざっと見積もって、そこ基準に考える」というのをよくやるようです。いわゆるヒューリスティックです。すべての同種商品の平均価格を瞬時に出すことはできませんが、「こういう商品はだいたいこのくらいの金額が妥当かな」と考えます。これも「行動経済学」ですね。
さらに、「経済学」では「合理的経済人」は自己の利益のみを考えることを前提としていますが、人間はそれが完全にはできない、ということも書かれています。昨今話題となったネット通販の「送料自由」なんて、いい例ですね。平均100円弱となったようですが、「合理的経済人」ならば絶対に「送料無料」を選ぶハズです。

「経済学」となると血の通わない数字と論理だけの世界になりますが、そこに感情や感覚で動く人間のエッセンスを入れ「行動経済学」とすると、途端に現実性とその面白さができてきます。
ことし(2017年)のノーベル経済学賞は行動経済学の研究者が受賞しておりますので、本書を読むのもよいと思います。

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