「日本語について相談したいな」と常に思っているわたくしですから、この本を手に取るのは自然です。
1980年代後半頃に雑誌で連載されていた「日本語相談」の文庫版です。読者からの日本語に関する質問に、言葉に造詣の深い井上ひさし先生が見識ある回答していく内容です。
約30年ほど前の連載ですから、ここに出てくる「はやり言葉」に時代を感じます。「ビョーキ」とか「マルビ」とか「〜じゃん」とか。
また逆に、ここに「掃除する」「洗濯する」と言うが「買物する」とは言わない、と書かれてありましたが、「買物する」は2017年においては自然な言い回しに思えるので、本当に言葉は時代とともに移ろっていくものなのだなと思いました。
しかしながら、時代を感じる箇所はあっても、ここにある質問と回答は色あせることなく、いまでも疑問に思うことがたくさん載っていました。そこに井上先生のユーモアのある回答。なかなか難しい質問には「これでお茶を濁します」なんてあったりして、あたたかさを感じました。あくまで「相談」なので、これでいいのです。
「XXちゃんのバカ」と言うときはなぜ「は」ではなく「の」なのか、日本語は「擬態語」がかなりあるが英語に「擬態語」がないのはなぜか、略語にあふれる日本語をどう思うか、濁点や半濁点について、「うれしいです」の過去形は「うれしかったです」「うれしいでした」のどちらか、など、相談内容は多岐にわたります。英語に本当に「擬態語」はないのか、に関してはなるほどといった回答でしたね。
そもそも相談内容が面白く、当たり前に思うことを深く考えること自体が楽しく興味深いものだなと思いました。やっぱり「面白さ」は日々の生活のそこら中にあるし、些細なことでも「疑問に思って面白がれるか」がたいせつなんですよね。そんなことを感じる本書でした。
もちろん、日本語や言葉に興味のある方は必読だと思います。ひとつひとつの質問と回答がコンパクトにまとまっていて、非常に読みやすいです。オススメです。