昭和から平成にかけてのテレビ報道をYoutubeで繰り返し何度も観ているわたくしですから、この本を手に取るのは自然です。
昭和天皇の沖縄訪問計画、手術と闘病、そして昭和の終わりまでが、ニュース記者の目線で書かれています。多少の表現的な誇張はあるかもわかりませんが、いわゆるドキュメントですね。
テレビ放送が始まってはじめての「天皇の手術と闘病と崩御」をどの程度、どうやって、テレビ報道は伝えるべきか。私人として、公人として、そして国民の象徴として、どう伝えるべきか。それは非常に難しく、悩みながら取材し報道していることがわかりました。
しかしそのうえで、その報道は(結果として)過剰であり、「記者たちはどこか天皇の死を待っている」ようにも見えました。「体調が悪化したものの幸い天皇は小康状態を保ち、その後それ以外の報せはなくガッカリした」というような記載には、テレビ黄金時代という背景があるにしても、すこし傲慢にも思えます。
とはいえ、正確な情報をつかむために記者たちは泊まりで取材を続けていたという点にはアタマが下がるとともに、「情報がなくガッカリする」気持ちはわからなくもないです。
天皇の体調が過剰に報道され世相を左右し、体調悪化時は「自粛」の波が日本を包むようすを今上天皇は皇太子として見てきたわけですから、そうなる前に自らは退位し皇位を継承することを「お気持ち」として表明したことも、本書を読み痛いほどに理解できました。陛下は自身の健康問題というより、それを受ける日本全体を案じたのだと思います。報道のありかたひとつとっても、その影響は大きいです。
ただ、退位した天皇にもしものことがあった際、テレビ報道は「はじめて」それを伝えることになってしまいますが…。
テレビ報道が昭和最後の日までを伝えたそのありかたは、これが正しかったかどうかはわたくしにはわかりません。その内容とその熱量に興味があるかたには本書はオススメです。カギカッコが誰のセリフなのかよくわからない箇所はありましたが、小説のようでもありドキドキしながら読めました。
あと、本書を読んで昭和天皇崩御の映像をYoutubeなどで鑑賞すると、より「なるほど!」と思えると思います。