【本】#031 タモリと戦後ニッポン / 近藤 正高

タモリと戦後ニッポン
タモリと戦後ニッポン

タモリさん(タモさん(タモさま))のことをもっと知りたいと思っているわたくしですから、この本を手に取るのは自然です。

戦後まもなくの1945年8月22日に生まれたタモリさんの半生を軸にし、その時代時代の日本の政治経済や文化風俗などを書いています。
大きく分けると、芸能界デビュー前・芸能界デビュー後・笑っていいとも!開始後・笑っていいとも!終了後となりますでしょうか。『笑っていいとも!』開始前のタモリさんについての記述も細かく(この時代についての記述が、本書のメインであるように思います)、「芸風はどのように培われたか」「なにに重点をおいて仕事をするか」がよく解りました。

タモリさんは「異色のヤバ芸人」であったのが、いまや「国民的芸能人」となりました。
タモリさん本人は「オレは昔から何も変わっていない」とよくおっしゃっていますが、本書を読むとそれは半分その通りで半分その通りではないように思います。おそらくタモリさんの根っこの部分は変わっていなくて、「テレビでの見せ方」と「それをとりまく時代」が変わったのだと思います。
わたくしたち視聴者は「テレビでの見せ方」がタモリさんそのものになりますので、それが変われば当然「タモリは変わった」と感じます。極端な例としては、教養番組である『ブラタモリ』においても、タモリさんは不意にNHKの女子アナウンサーに向けて「セックス」みたいなことを言ったりするフシがあるので、それに鑑みてもタモリさんの根っこの部分は変わらずで、「過激なところをど真ん中におかなくても地質や鉄道などに詳しいタモリの魅力と番組の面白さは伝わる」と、制作側が新たな「見せ方」を作りだしてきたのでしょう。そして「時代」は、いつからかそのようなタモリさんを要求してきたのだと思います。
つまりこれは、「いろいろなテレビでの見せ方やいろいろな時代の要請にも対応できる」タモリさんが、多芸多才であることの証左と言えるでしょう。

タモリさん(タモさん(タモさま))のことなのでちょっとアツく語ってしまいましたが、本書を読むと漠然と思っている「タモリさんのおもしろさ」がより判然としてきます。同時に、戦後の時代背景についての知見も蓄えられます。一挙両得でオススメです。

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