会社の後輩(男性)が、東西線に向かって「舌を出すんじゃない」と言ったときの話です。
混雑する東京メトロ東西線。飯田橋駅から乗った後輩は、門前仲町駅へ向かっていました。
東西線は途中駅に到着。開いたドア付近に乗っていた後輩は、背後から「あっ、あっ、あっ」というおばさんの声を聞いたそうです。「降りようとして降りれないのかな」と思った後輩は、いったん下車し車内の方を見ておばさんが出てくるのを待ちました。しかし「あっ、あっ、あっ」と言いながらいっこうに降りないおばさん。
そして後輩をホームに残し、ドアは閉まりました。門前仲町駅ではないのに。
閉まったドアを挟み、対峙する後輩とおばさん。おばさんは顔前に手刀を繰り出し「ごめんネ!」のカオ。
後輩はなんだか恥ずかしくなりその場に留まることができず、電車の進行方向へと歩みを進めました。
通常、電車はドアが閉まってからすぐには動き出しません。車掌が戸締め等安全を確認し運転士に出発の合図を送ることで、加速を始めます。
後輩が電車の進行方向へホームを歩き始めたときには、車掌は安全確認中。電車はまだ動いておりません。
進行方向に10数メートル歩いたところで電車は動き始め、おばさんのいるドアが後輩へと追い付きます。
後輩へと追い付き追い越すドアで、手刀を繰り出すおばさんはさらにペロッと舌を出し、なおも「ごめんネ!」のカオ。
「やめなさい。舌を出すんじゃない。」
その声は、加速する東西線が巻き起こす音と風にかき消されたのです。