お弁当箱入れを東京メトロの車両の網棚に置き忘れて帰宅するという凡ミス。
「東京メトロの」というところに、この物語の重要性を隠しています。
東京メトロ日比谷線で帰宅中、手に持っていたお弁当箱入れを網棚に乗せていました。やがて目の前の座席が空いたので着席。このとき、網棚のお弁当箱入れを再び手に取り着席しなかったのが、すべての敗因です。
まんまとお弁当箱入れを置き忘れ帰宅。ばか丸出しだし、何より悲しい。
すぐさま「お忘れ物をしたときは」から、わたくしは東京メトロに対し、忘れ物表明をしました。
35歳(当時)にもなってお弁当箱入れを車内に忘れ、「忘れたけどそれ大事だよ! 後日取りに行くよ!」と表明する。こんな恥ずかしいことありますか。
翌日の昼休み、同僚に「あれ、今日はお弁当じゃないんですね」と言われ、いきなりの辱め。「いや〜ちょっと……」と濁った返事をします。
こういうときに「今日はお弁当作るの面倒くさかったんです! ばかやろう!」とかってスパッとウソをつける人間になりたい。
東京メトロからは「飯田橋の忘れ物センターに集荷されています」という連絡があり、退社後に飯田橋に向かいました。
お忘れ物センターではカンタンな書類の記入と身分証の提示を求められましたが煩わしさはなく、やがて東京メトロの方がお弁当箱入れを大事そうに抱えて奥から笑顔で出てきました。その笑顔、わたくしの笑顔だよ! ありがとう!
「では、ここまでの運賃は東京メトロが負担しますので、定期券外の経路をお知らせください」
えっ! 運賃まで負担してくれるの?
なんたるホスピタリティ。忘れ物をしたのは完全にわたくしの凡ミスなのに。
東京メトロの方が何らかの証明書を書いてくださり、それを出札時に駅員さんに渡すことでわたくしの運賃負担はゼロでした。
帰宅し、お弁当箱入れからお弁当箱を取り出しながら沈思黙考します。
そもそもこうして忘れ物をきちんと管理してくれること自体ありがたいのに、それを受け取るための運賃負担までしてくれるとは……。東京都民を輸送するという大義のもと、そこまでのサービスをする必要性はありません。しかし事実としてそれをやってのけている。まったく素晴らしい。東京メトロ本社(上野)に足を向けて寝られません。
それはそうと、お弁当箱を洗わずに持って帰る途中で紛失しているので、中身の状態が気になります。むちゃくちゃ臭くなっているハズだから、キッチンハイターで消毒しないと。
パカ……
あれ、キレイになってる……!
食べ終わってそのままにしていたお弁当箱が、キレイに洗ってありました。東京メトロの方が洗ってくださったのでしょうか。ホスピタリティ中のホスピタリティ。もう東京メトロではなく、東京☆神☆メトロです。「東京メトロ」の5文字それぞれに「おもてなし」のルビを振りたい。
東京メトロの忘れ物管理の素晴らしさ。これはみなさんに知っていただきたい。
ただ、東京メトロにとっては単純に負担になるだけですので、どちらさまにおかれましても、お忘れ物のなきよう、お降り下さいませ。