掘りごたつタイプの座敷に通された際は、多少気をつける必要があります。
会社の飲み会があり、後輩(女性)とわたくしのふたりで先行して居酒屋に入店したことがありました。
掘りごたつタイプの座敷に通され、向かいあって座ります。掘りごたつタイプの座敷ですから、当然クツを脱ぎます。
カバンを置いたり上着を脱いでその辺にかけたりし、「ふ〜」みたいなことを言いつつ着席。
「みなさん来てから注文しましょうか。それとも先に飲んじゃいましょうかね」
そんな会話を後輩(女性)はしていますが、それよりも気になることがあります。
なんか足臭いな…。
なんか足臭い。でもこれは自分の足臭さではない。
論理的に解釈すると、足臭さがあり、かつそれが自分の足臭さではなく、そこに自分を含め2名しかいないとすると、それは向かいに座っている後輩(女性)の足臭さです。
かわいい系の後輩(女性)であるため、そのファンタジーさとリアルさのパラドックスがショックであり、そして逆に興奮も禁じえません(当方ヘンタイなのかもしれません)。
なんか足臭い。先に飲み物だけ注文することにした気がしますが、なによりもなんか足臭い感じがあり、記憶が定かではありません。
「ちょっとお手洗い行ってきますね」
後輩(女性)が離席しトイレットへ旅立ちました。
あれ、まだなんか足臭いな…。
後輩(女子)が旅立ったものの、いまだ「在る」状態です。そんなことあります?
そんなにすごいの? そんなに?
後輩(女性)が不在になったのをいいことに、カラダをかがませ掘りごたつタイプの座敷の掘りごたつ部分にカオを近づけたりして嗅いだものの、フラットになんか足臭い。カオをどの位置に持ってきてもずっとフラットになんか足臭いのです。
おかしい、どこまでいってもフラットかつコンスタントになんか足臭い。
「まさかそんなこと…」小声でつぶやき、同時に無意識にハナの下を拭います。
あっ、わかった。これ違うわ。自分のハナの下が臭いんだわ。
自分のハナの下の臭さは自分の足臭さとは似て非なる要素を持っており、源泉が自分ではないと誤解してしまっていたのです。
なんか足臭い。それはただ単に、わたくしの加齢に伴うものでした。
信じられないかもしれませんが、加齢とともに、ハナの下がずっと臭くなることがあるのです(当人比)。
後輩(女性)がトイレットから戻ってきました。
「あれ、まだみなさん来てないんですね」
「なんだか申し訳ない」
そんな言葉をノドの奥に押しとどめておき、わたくしはハイボールでそれをぐっと流し込んだのです。