いまでも納得いかないのが、「は？ イノッチは性格がいいからいいんだよ」です。

中学生のころ、V6が女子生徒のあいだで人気でした。1996年とかだったかな。
岡田くんはかっこいい、森田くんもかっこいい、三宅くんはちょっとかわいい、ほかのメンバーはちょっと忘れてしまいましたが、さすがはジャニーズアイドル。美男を取り揃えています。

「岡田くんかっこいいよね〜」「三宅くんかわいいよね〜」
女子生徒からそんな声が聞こえてきますし、それにはわたくしもだいぶ納得でございます。

でも、ちょっと待って。イノッチはどうなの？

イノッチは、ほかのメンバーと比較して系統が異なるというか、美男感がなく、中学生当時のわたくしは「イノッチはなんか違うよな〜」と思っていたのです。
わたくしはV6に心酔していた同級生に聞きました。「でも、イノッチはかっこよくないよね？」

そしたら、「は？ イノッチは性格がいいからいいんだよ」です。

電波に乗ってやってくる、画面のなかの彼。あるいは、トラックで輸送され書店に陳列された、雑誌の写真のなかの彼。当然ながら「性格のよさ」なんて、解りようもない。
「いやいや、『性格のよさ』なんてテレビとかじゃ取り繕っているだけかもしれないじゃん。実際は飲食店の店員に横柄だったり、道端で散歩中の犬の横っ腹を蹴ったりしてるかもしれないよ」なんて言っても、意味がありません。だってそれをしたら、「そういうこと言うって、まつおかくん性格悪いね」と言われてしまうだけだから。

「ははは(笑)、性格がよさそうだよねぇ、そうだねぇ」

わたくしはなんとなく笑って、笑いは乾き、教室のすみをぼんやり眺めます。カベに貼ってある時間割、右下の画鋲が落ちてるから剥がれてるな。

かつて外国でおこなわれたといわれるおぞましき魔女狩り裁判は、尋問に対しどのように回答しても「被疑者は魔女と認定され処刑される」結末を辿ります。
女子中学生にとって、ジャニーズアイドルとはそういうもの。どのような男性であってもジャニーズであるかぎり、彼女たちは彼らを肯定的に捉える。そこに理由や根拠は要らない。