前回興奮気味にお伝えした『恩廻(おんまわし)公園調節池』の見学は、神奈川県の治水事業を見学するツアーの一環でした。よって、『恩廻公園調節池』以外も見学しました。
その中で、なんなんだと思ったのが「鶴見川流域はバクの形」、そして「2018年度5年生『矢上川のこう水対策』ソング」です。
まずは「鶴見川流域はバクの形」。
これが見学する先々で連呼され、完全に覚えてしまいました。
「まあ、確かに言われてみれば……」あるいは「お、おう」としか表現しようのない感想をいだきました。
「流域の形状を上空から見るとバクの形をしている」という、なんというかメタ的な視点をムリヤリに動物に落とし込んでいるところがすごい。「バクじゃなくてもいいのでは?」と思える形状だし。このもやもやをうまく文章に表現できないもどかしさが、もやもやをさらに加速させてゆく。
鶴見川を語るうえでは「鶴見川=バク」という方程式が前提となるらしく、とにかくバク推しがすごい。
バクのイラストが描かれた壁掛け時計。
ふつうにかわいい。ふつうにかわいいのですが、「鶴見川流域はバクの形」という非常にニッチなイメージが、ここに具現化しました。というかわざわざ作ったんだ……。
「なんでバクなの?」
「鶴見川だから」
「は? 鶴見川って野生のバクがいるの?」
「いない」
「じゃあなんでバクなの?」
「流域がバクの形だから」
「は? 流域?」
仮にこの時計を自宅の壁に掛けたときに想定される問答。説明が難しすぎる。
別バージョンの時計もありました。
このイラストだとパッと見でバクって解りづらいし、そもそもなんでちょっとセクシーなんだ。
鶴見川流域がバクの形だから、でかいバクのぬいぐるみと記念撮影もできます。まだちょっと「なんで?」が消えなかったので、わたくしは記念撮影はできませんでした。
「鶴見川流域はバクの形」。絶対完全一生涯の記憶となりました。バクを見れば「鶴見川……」と思い、鶴見川と聞けば「バク……」と思うでしょう。
つぎに、「2018年度5年生『矢上川のこう水対策』ソング」。
「歌、作っちゃったんだ」という思いが、真っ先にありました。ふつう 歌、作ります?
鶴見川流域センターに置かれていた楽譜です。「楽譜、置いちゃうんだ」です。
説明がとくになく置かれていた楽譜だったので推測になってしまいますが、全体の文脈的に考えると、かつては矢上川は氾濫する危険が高い川だったため近傍の綱島には嫁をやるなと言われていた背景があったけども、洪水対策も最近は充実しているぞ安心だぜ、そういうことなのでしょう。
それにしても双方の歌詞です。
むかし 綱島の 周りの 村人が
洪水 すけごう(助郷?) 大飢饉で
苦しむ 綱島 見て こう言った
綱島には 嫁やるな
綱島在住の知人に伝えたい歌詞。
洪水対策 最近充実
大雨降っても だから安心だ
多目的遊水池 恩廻調節池 矢上川調節池
洪水対策 最近充実
大雨降っても だから安心だ
鶴見川流域 鶴見川流域
「だから」の使い方に味わい深さを感じます。なぜか「変なおじさん」の歌の「だから」の部分を思い出す。
双方もAmから始まるかなしさ、とくに「こう水対策 最近充実」はBPMが180でdimコードを多用しコード進行が独特なところといった音楽的な面白さもあります。
思わず楽譜を大事に持って帰ってしまいました。楽譜、置いとくべきですね。
治水事業は、災害を未然に防ぐことを目的に実行します。つまり平時には、その恩恵は受けられません。また、恩恵を受けること自体が「平時を提供すること」となってしまうためありがたみがなく、治水事業に着手すると「税金のムダ」「環境破壊」といった短絡的な批判を受けやすいものと言えるでしょう。こういう批判をする人は、本当にばかじゃないかと思いますが。
そういった批判を回避するためのアンサーの一部が「鶴見川流域はバクの形」「矢上川のこう水対策ソング」であるのかなと思うと、なんというか、言葉は濁しますが、思うところがありますよね……。行政の苦労が伺い知れます。
「鶴見川流域はバクの形」であり、「綱島に嫁やるな」と言われていたけど「こう水対策 最近充実」である。
終始「なんなんだ」ではありましたが、また知識が増えました。世界はたのしい。