「そのとき流れていた音楽」がやけに印象に残り、個人の価値観の定義を強固なものにすることがあります。
大学生のころ、数少ない学友と松戸にあるくそ安い焼肉屋さんに行ったことがあります。
具体的な価格帯は忘れてしまいましたが、焼くとコンクリートみたいな色と質感になるお肉で、学友は「まるでゴムのような肉だな……、うまい!(?)」と言って食べていました。貧乏だったので、質より量、安さこそ正義をわたくしたちは標榜していたのです。思い出こそ最高のスパイス。
その焼肉屋さんへの往復は、学友のクルマ(野田ナンバー)に乗せてもらいました。
「なんか聴く?」と言いながら学友が流したのが、『VALENTI/BoA』でした。
タイトなジーンズにねじ込む
わたしという戦うボディ
どんな小さな願いにも
貫(つらぬ)くチャンスをあげて My Dream
「わたしという戦うボディをタイトなジーンズにねじ込んでるのか、たしかに焼肉めっちゃ食うし、わたしというボディは戦ってるな……。いまジーンズはいているし」
破れたジーンズと 繊細すぎる目を
守ってあげたくて 家族には言えない
「タイトなジーンズに戦うボディをねじ込んだらジーンズが破れちゃったって、そりゃ家族には言えないよな。そう言えばジーンズに焼肉のたれがちょっとこぼれちゃったし……家族には言わずに洗濯しよう」
『VALENTI』という楽曲のテンションと歌詞が、どうしてもいまのこの状況に合致してしまいます。
それにしてもジーンズのことばっかり歌ってるな。
チカラ強く響くバスドラムやベースの音が印象的なこの楽曲はわたくしの耳に残り、同時に「焼肉を食べるときの歌」となりました。
わたくしにとっては『ヨーデル食べ放題』よりも断然、『VALENTI』のほうが、焼肉の歌です。