生命の進化に興味があるわたくしですから、この本を手に取るのは自然です。
生命の進化について、「協力」「裏切り」という両極の観点を軸にし、論理展開していく内容でした。
結論的には「協力」することで生命は進化してきたという、ごく当たり前の筋書きではあったのですが、では具体的には生命はどのように「協力」してきたのか、「裏切」る生命はいなかったのか、それらが平易な文章でつまびらかに書かれています。
そもそも「生命とはなにか」「生命と非生命の違いはなにか」から始まり、わたくし自身 高校生のころに生物の授業をとっていなかったので、ここから興味深かったです。知らなかったことばかり。
さらには生命の種類(単細胞生物や真核生物など)、そして社会性をもつ生物(アリやハチやヒト)、たぶん学校でひと通り習ったのでしょうが、改めて勉強になりました。
生命進化の局面には「協力」がありました。
細胞どうしで役割を分担し「協力」すること、血縁のある同種の生物どうしでコロニーを作り「協力」すること、そして目に見えない社会を回すためにヒトは「協力」すること。ヒトがもっとも進化した生物であるならば、そこにはあらゆる生物のもつ常識を超えた「協力」関係があることに間違いありません。
血縁関係を超えて個々を信頼しあい「協力」するなんて、他の生物には考えられないというのも、そりゃそうなのですが、本書を読んであらためて認識しました。ヒトすごい。
では「裏切り」はどうなのか。
「裏切」るものは淘汰されていき、進化の道から外れていきます。進化という壮大な道でもそうですし、アリの社会や人間社会でも同じですね。「裏切」る者は、社会において罰が与えられるか、そうでなくても疎まれる運命にあります。ゲーム理論(囚人のジレンマ)まで出てきて、「裏切り」は一時的なアドバンテージとなっても長期的には進化のアドバンテージにならないと説いています。
また、「進化とは単純になること」という言説にもヒザを打ちました。
進化することとは複雑化することだとわたくしは勝手に思っていましたが、生物における進化とは、ムダを削ぎ落とし環境に順応し最適化していくことなので、たしかにそれはある種の「単純化」といえます。
日本の街並みを観て、似たような建物が増えているのは合理化に基づいた進化といえるでしょう。クルマも似たデザインが増え、どこに行っても同じチェーン店があるようになったのも、「進化」といえます。
世界は正しく進化していて、どんどんムダがなくなっていく。ただ、まあ、それはちょっとつまらないなとも思います。便利ですけどね。
生命のおこりやその進化について、「協力」「裏切り」の切り口で論じる本書。当然ながらオススメです。