【本】#054 無意識の構造 / 河合隼雄

無意識の構造
無意識の構造

無意識の構造について興味のあるわたくしですから、この本を手に取るのは自然です。

閾下の意識、すなわち無意識とはどういうものかを多角的に検討している本書です。思っていたより読み進めづらい内容で、読了するのに苦戦しました。
多くの人(患者さん?)が見た「夢」から閾下の意識を分析し、そこから無意識の構造を検討しています。文章が少し古く、論旨はあまり明確ではなく独善的な印象もあり、そこが読了に苦戦した理由かと思われます。

とりわけ興味深かったのは「普遍的無意識」や「母性の二面性」、男性がもつ女性性「アニマ」と女性がもつ男性性「アニムス」です。
いずれも無意識の構造を議論するなかでも重要かつ共感できるテーマでした。これはおもしろかった。

世界各地の神話や寓話や物語、あるいは想像上の生物にはどこか似通った箇所があり、これは「普遍的無意識」のなせるわざです。
いっぽうで「愛」に対するイメージの差、すなわち「愛とは太陽である」「愛とは月である」と、地域や文化によって概念のイメージ・メタファーが異なるところもおもしろい。

また、「母性の二面性」も共感です。
母とは始まりをあらわし、そして終わりをあらわす。優しさの象徴であり、同時に恐ろしさもあるのが「母性」です。おかあさんって優しいけど怖い、極端にいえば生と死で、その二面性を多くの人が母性に無意識的にイメージしているというのもおもしろい。

そして「アニマ」と「アニムス」です。
高校の倫理の授業でやった気がするこの単語ですが(アガペーとかエロースとか)、カラダの構造による性別とは異なる「無意識の中の性別」。自己の深層にあり夢に出てくる象徴としての性別が、「アニマ」「アニムス」です。心がカラダを司るのであれば、自身の「アニマ」「アニムス」を分析し、どの程度の強さや大きさなのかを把握することがたいせつではないかと、わたくしは思いました。

あと、文中に「〜せしめる」という言い回しが異様にたくさん出てきたのがおもしろかったです。そんなに使います? 「〜せしめる」。

けっして平易な内容ではなく、著者の考えを主体に書かれた客観性に乏しいものでしたが、興味深い本書でした。

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