わりと毎朝、菓子パンや惣菜パンを食べています。美味しいですよね。
ふとパッケージを見てみると、「ビスチョコデニッシュ」「BIS CHOCO DANISH」「BIS CHOCO DANISH(封蝋印に)」と3回書いてあり、おもしろくて写真におさめました。
さらによく見ると、もう一歩踏み込んだメッセージもあります。
マーガリンとグラニュー糖をトッピングしました。
−ホテルトーストシュガーマーガリン
デニッシュ生地とビスケット生地で2種類のチョコをはさみ焼き上げました。
−ビスチョコデニッシュ
こんなにホスピタリティにあふれた自己紹介があったなんて、気づきませんでした。製作者のかたの優しいカオ(ジャムおじさん)が見えてくるようです。
わりと毎朝 菓子パンや惣菜パンのお世話になっているのですが、わたくしは菓子パンや惣菜パンのことをあまりに知らなすぎていることに気づかされました。世界って、解像度をあげると身近にあるものでもおもしろいですね。
では、ジャムおじさんからのメッセージ、パンと一緒に味わっていきましょう。
■ シュガーマーガリン / トップバリュ
乳酸菌効果でソフトでしっとりした口あたりの食パン
−シュガーマーガリン
「乳酸菌効果でソフトで」の部分に口ベタなジャムおじさんを感じます。シュガーマーガリンなのに「シュガー」「マーガリン」のどちらにも言及していないところに、パンそのものに対する絶対的な自信が垣間見られます。
■ 信州発 牛乳パン / Pasco
信州産牛乳を練りこんだやわらかいパンに、信州産牛乳入りのクリームをはさみました。
ー信州発 牛乳パン
凛々しい牛のイラストも頼もしい牛乳パン。4行中2行に「信州産牛乳」を入れ込んでくるという強硬な姿勢に、仕事に厳しいジャムおじさんを思い浮かべることができます。
■ ブルーベリーとチーズのリングデニッシュ / フジパン
ブルーベリージャムとレアチーズ風味クリームを包み焼き上げました。
ーブルーベリーとチーズのリングデニッシュ
「包み焼き上げました」に少々のこだわりを感じることができますが、どちらかといえば事実を淡々と述べるタイプのジャムおじさんか。直上に「BLUEBERRY & CHEESE RING DANISH」ともあり、素材と事実をメッセージの主軸とする一貫性に好感がもてます。
■ うぐいすぱん / ヤマザキ
うぐいすあんを包みました。
ーうぐいすぱん
さらなる事実で勝負するジャムおじさん。「超ロングセラー商品」ゆえの自信か。
■ スペシャルサンド / ヤマザキ
ミルク風味クリームと甘酸っぱいあんずジャムをサンド
−スペシャルサンド
こちらも「超ロングセラー商品」であるものの、「スペシャルサンド」という「ほぼ何も言っていない」商品名を危惧したのか、ていねいなメッセージとなっています。とはいえ、メッセージを体言止めで終えているジャムおじさんからは、少々の余裕も感じれます。
ていうかあの中央の赤いの、あんずジャムだったんだ。
■ ダブルロール / ヤマザキ
ダブルのおいしさ!ココアとプレーンの2色のロールケーキです。
−ダブルロール
「ダブルのおいしさ!」でいきなり距離を詰めてくるジャムおじさん。こちらも「超ロングセラー商品」であり、パッと見でどんなパンなのかの想像もつきますが、「ココアとプレーンの2色」とていねいなメッセージでその味を教えてくれています。……プレーン?
■ 5つに切ったロールケーキ[コーヒー] / ヤマザキ
スポンジにコーヒークリームを巻き込んだ、ふんわりとしたロールケーキです。
−5つに切ったロールケーキ[コーヒー]
「ロ」の字と「巻き込んだ」というメッセージで、クリームの状況が切実に伝わります。直上の「R」の字の巻き込み具合もすごい。ジャムおじさんが精魂込めてクリームをパンで巻いているようすが目に浮かびます。右上を飛行中の熱気球は、この世界におけるアンパンマン号のようなものでしょうか。
■ ランチパック ツナマヨネーズ / ヤマザキ
ツナとオニオンを和えたツナサラダをサンドしました。
−ランチパック ツナマヨネーズ
「ツナとオニオンを和えたツナサラダ」の重言感のわりにマヨネーズについての言及がなく、ジャムおじさんが心配。
ただ、右上の「ランチパックきょうだい(正式名称不明)」がでかいマヨネーズを輸送しているため、後進の育成にも鑑み、あえてマヨネーズの言及を省いたかのかもしれません。「Two soft sandwiches filled with tuna and onion salad.」にてグローバル化に対応。
後進の育成やグローバリゼーションの企図から、このジャムおじさんはマネージャータイプと言えそうです。さすがはランチパック。
■ 黒糖 スナックサンド 旨ミルク / フジパン
特濃ミルクを使用したミルククリームとミルクホイップ
−黒糖 スナックサンド 旨ミルク
とにかくミルクだ、ミルクを感じてくれ! というジャムおじさんの熱い想いが伝わってきます。フジパンのスナックサンドはヤマザキのランチパックにスタンスが似ていますが、「元祖」と書いてあるあたり、スナックサンドのほうが先の発売なのでしょうか。そういう点でも、ジャムおじさんの前のめり感が伝わってきます。先のランチパックとは対照的ですね。
■ 伊予柑ブレッド / タカキベーカリー
伊予柑やオレンジの爽やかな香りと甘酸っぱいおいしさが楽しめます。朝食やおやつにどうぞ。
−伊予柑ブレッド
消費者の利用シーンまでも提案する、トータルコーディネーター型のジャムおじさんです。当然ながらパンそのものについての言及もていねいで、仕事ができそうな雰囲気。メッセージの最後に社名を記しているところに、マジメさも感じられます。個人としての伊予柑ブレッドではなく、法人としての伊予柑ブレッド、そういう思いも汲み取れます。
■ ミニスナックゴールド / ヤマザキ
Sweet Pastry
−ミニスナックゴールド
ジャムおじさんからのメッセージがない!? と思いきや直上に「Sweet Pastry」とあり、つまり「菓子パン」とのこと。「ミニスナックゴールド」も意味としてはよく解らないし、さらに「Sweet Pastry」で混乱に拍車がかかります。
ただ、逆に考えると、「森羅万象に意味があると思うな」という哲学的なメッセージなのかもしれません。メッセージがないことによるメッセージ。たしかにこの「ミニスナックゴールド」は「ミニ」なのにけっこうでかいし、「概念としての菓子パン」に挑戦しているジャムおじさんの意欲作なのでしょう。そういう意味で考えると、菓子パンとしての「ミニスナックゴールド」の深さに驚かされます。
■ ネオ黒糖ロール / フジパン
そのままでおいしいマーガリン入り
−ネオ黒糖ロール
「そのままでおいしい」の「そのまま」とはなにか。マーガリンが入っていなければ「そのまま」では美味しくないのか。マーガリンの周囲の味がよくないということは、マーガリンとのバランスを考えて食べなければならないのか。だったらもうマーガリンだけでいいのでは? そもそも「ネオ」とは?
このジャムおじさんのメッセージは問題作です。メッセージからこのパンのアドバンテージが感じられない。もしかしたら前任から引き継がれたばかりで、菓子パン業界がまだよく解っていない新ジャムおじさんなのかもしれません。お前なんかもうマーガリンおじさんだよ。
■ Wafers sand コーヒー / Pasco
ウエハース コーヒークリーム ミックスジャム スポンジケーキ
−Wafers sand コーヒー
アーキテクチャのみに言及。事実をテクニカルに図解で伝えるジャムおじさん。地学の教科書かと思いました。
■ ジャンボむしケーキ プレーン / キムラヤ
王冠は私だけ
−ジャンボむしケーキ プレーン
ジャムおじさんサイドからではなく、むしケーキサイドからのメッセージもありました。長文の英語で書かれたメッセージのほうがジャムおじさんサイドからのものでしょうか。「as a mixture strong tobacco」とか書いてあるようですが、こちらのジャムおじさんも心配です。おそらくメッセージの送信先を間違えたのでしょうから、ここでは割愛いたします。
こうして並べてみると、いろんなタイプのジャムおじさん(一部マーガリンおじさん)が日夜パンを作っていることが解りました。パンについての言及がそのメッセージの大部分ではあるものの、利用シーンに言及したり構造を図解したりと伝えかたもさまざま。
ジャムおじさん(一部マーガリンおじさん)からのメッセージを味わいながら、いつもの菓子パンや惣菜パンを食べることもオツかなと思います。菓子パンの楽しみかたが、いままで以上に広がります。
それにしても、「王冠は私だけ」て……。