地方と東京と間だけではなく、東京の内部でも格差があるのではないかなと常に考えているわたくしですので、この本を手に取るのは自然です。
本書では、東京都内にとどまらず、東京近郊のさまざまな街における「永続的に住み続けることへの是非、住みやすさ」を「浮かぶ街・沈む街」として論じています。
この「住みやすさ」は、決して人気の街やオシャレな街といったトレンドや流行のような表面的なところではなく、あらゆる世代が共栄していけるか否かを街の良し悪しとして調査・研究したものに論拠をおいて評価するものとなっています。
ゆるくもしっかりとしているコミュニティや、行政まかせではないまちづくり。世代に偏りのない人口構成、適度に入れ替わる住民。活発な地域活動、時間を生み出すための職住近接。そして何より、人と人の協力。本書では、こういった要素が「住みやすさ」の土台にあると論じられています。
たしかにこれらはすべて、街の活性化を促す条件になるとわたくしは考えます。街はだれかが盛り上げてくれるものではなく、その街の住民が一丸とならなければなりません。そしてそれは、一過性ではなく、永続的なものでなければ結果につながらないでしょう。当然、これらの条件がひとつふたつと揃えば、加速度的に他の条件も満たしていくことでしょう。
ただ、本書が執筆されたのは新型コロナウイルスの流行前です。
人と人の物理的接触を制限する必要性が出てきたとき、「住みやすい」街を実現する手段について再考する必要もでてくるでしょう。おなじ空間でレクリエーションをすることも本書では「浮かぶ街」の条件として挙げられていましたが、ここは再考の余地があるかもしれません。
人口が減っていき地方は疲弊していますが、特にコロナ禍において、東京も同じです。おそらく今後、東京の人口が右肩上がりになることはないでしょう。
バラ色の未来を描けない東京においても、人口と税収が潤沢とは言えなくなる東京においても、「住みやすい街とはなにか」をひとりひとりが考えていかなければなりません。もう東京は、「カネで解決」できないのです。
地域活動に参画するためには余暇と余裕、つまり時間が必要で、その意味においても、異常に長い通勤時間や長時間労働の是正、すなわち働き方改革が必要になると、わたくしは考えます。
コロナ禍によるリモートワークや東京からの脱出、さらには働き方改革。パラダイムシフトが起きつつある現在の社会情勢下で本書を読み、いろいろと考えさせられました。
文章中の読点(、)の位置に違和感がありわたくしは読みづらく感じてしまいましたが、東京のいろいろな街の側面について知ることのできる本書、オススメです。