昨年10月に、『どこでもドアきっぷ』という「連続する3日間においてJR西日本/四国/九州の特急とかが乗り放題のきっぷ」を利用し、西日本を周遊しました。
その行程の旅行記が『JRフリーきっぷの旅』という単行本に掲載されます。2021年1月26日(火)発売。買ってね!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
旅の全行程はそちらを読んでいただくとしまして、そちらに入りきらなかった(3,600文字までという指定があったのです)けどわたくしの琴線に触れたできごとを写真とともに振り返ろうと思います。
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東京から西日本に行く手段としてはいくつかあるのですが、わたくしは飛行機NGなので当然鉄道を利用します。
たとえ博多まで5時間かかっても、ぜんぜん余裕です。なんなら鹿児島中央まで7時間も余裕です(やったことないけど)。沖縄に行くことは、そもそも沖縄に興味がないので今回の人生では諦めています。来世に期待。
今回は同行していただく編集のかたのご好意で、『サンライズ出雲』という寝台特急で出雲市まで向かうことにさせてもらいました。しかもシングルデラックスという部屋。地球に生まれて?(よかったー!)
あっという間(約12時間)に出雲市駅まで到着し、ここからが1日目のスタートです。
次の列車まで時間がありながらも出雲大社まで行く充分な時間はないため、出雲市駅の周囲を散策します。ちなみに、この時点でちょっとおなかの調子が悪くなってきていました。
わたくしは旅行先では必ず地場スーパーを訪れ「さも全国的に売られているように装っているけどそこでしか見たことのない商品」を鑑賞するのを楽しみにしているので、出雲の地場スーパーを目指します。ラブホのような看板を掲出しているスーパーにて、知らないコーヒー牛乳と知らない高級クリームパンを買いました。いま思えば、知らないコーヒー牛乳が、おなかの調子の悪さに拍車をかけたんでしょうね。
保線工事の関係で列車が運休となっていて代行バスに乗車し東萩駅で下車したところ、なぜかその先への乗り継ぎが不可能なダイヤとなっていたため次の列車が来るまで当地を散策。
同行の編集のかたが「ここにある萩バスセンターはどう見てもバスセ“ソ”ターに見える」と言っていたので、「いや、そんなことないですよね。『どう見ても』は言い過ぎですよね」と確かめに行ったところ、『どう見ても』バスセ“ソ”ターでした。萩の人たちはこの事実を受け容れているのか。だいじょうぶか。
あと、駅から「松蔭先生」という行先のバスが出ていたので戦慄。それは地名や施設名ではなく人名だし、どういうワケか敬称つき。萩の人たちはこの事実を受け容れているのか。だいじょうぶか。
地方のローカル線は列車にトイレがついていることが多く、安心しながら山陰を下関に向かいます。とはいえおなかの調子はよくない。
「下関ではお土産を買いたい」とわたくしは意気揚々とお土産売り場に向かったのですが、ぜんぶ閉店していました。ぜんぶ。新コロ憎し。
下関にある「海峡ゆめタワー」の『ゆめたん』もマスクをしていました。
2日目は早朝から豪雨でした。わたくしも早朝からひどい下痢でさしずめ豪雨といった様相。そんななか、下関から門司までは関門海峡トンネルを徒歩で渡ります。
人類は大きく2種類の人間に分かれるといわれています。すなわち、「関門海峡を徒歩で渡ったことがないか」「関門海峡を徒歩で渡ったことがあるか」。わたくしはこの日、前者から後者にクラスチェンジしました。多くの人類はまだ、前者のままなのではないかなと思います。その上わたくしは、「ひどい下痢をしつつも関門海峡を徒歩で渡った」という稀有な人類として歴史に刻まれることでしょう。
門司側のトンネル出入口はバナナ推し。「バナナの叩き売りが有名だから」という情報を同行の編集のかたから聞き「だからか」と思いましたが、そういう前提知識がないと完全に意味不明ですね。知識はその目から見る世界の解像度を引き上げるので、勉強しておいたほうがよかったなと思います。
博多からは『ゆふいんの森』という観光列車に乗り込みます。本来であれば博多から久留米をとおり由布院を抜け別府まで行けるのですが、残念ながら昨年の豪雨災害による鉄路寸断のため、途中の豊後森という駅までしか行けません。
『ゆふいんの森』は久留米からは久大本線というカーブの多いルートを通るので、かなり揺れます。逆にいうと、それまでは比較的穏やかなルートとなります。
にもかかわらず、久留米に着く前なのに、列車の揺れで同行の編集のかたがビン詰めのサイダーをハデにこぼしてしまいました。中身のサイダーを撒き散らしながらかなりの勢いで床を転がるビン。なぜか同時にお弁当まで座席と車体のスキマに落としてました。わたくしにとってはかなりショッキングな光景だったのですが、ご本人はあまり気にしていらっしゃらないようでした。
ただ、車掌さんの「久留米から先は久大本線に入ります。列車が大きく揺れることがありますのでご注意ください」のアナウンスに、「もっと早く言ってよ……」と心中穏やかではなさそうでした。
豊後森駅に到着し駅の周辺を散策したところ、3億円事件の犯人のような大分県警と目つきの悪いねこちゃんによる保安も万全なようで、いい街だなと思いました。
豊後森からはさらに九州を南下し、鹿児島中央へ向かいます。
3日目は夜も明けきらぬ5:00前から指宿枕崎線の始発列車に乗ります。
コロネルとトランコロン(いずれも過敏性腸症候群のクスリ)がやっと効いておなかの調子も復活しました。
これは単行本に寄稿した旅行記にも比較的詳しく書いていますが、日本最南端のJR駅である「西大山駅」に行くために始発に乗ったのです。人生で一度は行ってみたかった場所です。早朝なのに列車は通学生でかなり混んでいました。
通学生は全員「薩摩板敷駅」という駅で下を向き無言で降りていきました。ここには鹿児島水産高校があるようで、これは写真を取り損ねましたが、その高校の入り口に「反省から1日が始まる」みたいなスローガンが掲げられていて、「刑務所なのかな?」と思いました。
西大山駅は、その風景も最高でした。本当に行ってよかった。
早朝まで続いた雨も止み、わたくしのお腹の調子を象徴するかのような青空が広がっています。
再び戻った鹿児島中央からは新幹線で新大阪へ。そこからはサンダーバードという特急に乗り、福井県の敦賀という駅まで向かいます。
鹿児島中央(5時くらい)から敦賀(16時くらい)まで、ほぼ鉄道に乗りっぱなしです。鉄道好きじゃなかったら地獄でしょうね。
敦賀駅を降りたらいきなり「山」という行先のバスがやってきて、「松蔭先生」行きのバスを走らせる萩といい、日本海側にある街のバスの行先はやべえのばっかりだなと思いました。敦賀の人はご存知なのか解りませんが、「山」は対象を一意に特定できない一般名詞なんですぜ。
福井県は恐竜推しにつき敦賀駅のベンチに恐竜が座っていたのですが、「ふつうにジャマでは?」と思いました。
ベンチに座って恐竜の博士が恐竜の頭部のホネを研究していますが、これ仮にホネが人間の頭部だったらちょっとしたホラーですね。
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ルートは本誌を参照いただき、鉄道旅行が好きなわたくしにとってはかなり楽しい旅行でした。
新コロのせいでまた緊急事態宣言が発出されて最悪ですが、こういったフリーきっぷはいろいろな種類が出ているようですので、本誌で調べて旅に出るのもよろしいかと思います。