伝えたいことがうまく伝わらないもどかしさを常に感じているわたくしですから、この本を手に取るのは自然です。
かなり身近な言葉の使い方に基づき、伝わる/伝わらないを丁寧に論述しています。ふだんあまり気にしないような言葉の使い方も、突き詰めればおもしろい学問になるのだなといった印象です。
しゃべる内容が断片的であっても、あるいはしゃべることすらしなくとも伝わるのはなぜか。逆に、しっかり文章に起こしても伝わらない、あるいは曲解して伝わるのはなぜか。それらを心理学的な側面から論じています。
表情や口調、あるいは身振り手振りがコミュニケーションの大半を占めていて言語が伝える部分がごくわずかだったり、逆に透明性錯覚や知識の呪縛が邪魔して緻密に文章に起こしたつもりが伝わらなかったり、コミュニケーションの難しさとおもしろさが本書にはあります。
ある人の能力について、「その高さを本気で褒める」「その低さに皮肉を言う」をコメントした内容がほとんど同じ(文章として捉えると違いが解らない)といった事例も出てきて、これは本当に難しいと思いました。
わたくしが誰かを本心で褒めることも当然あるのですが、皮肉にとられていたらどうしよう。
本書では、あらゆるコミュニケーションを分類わけし整理したうえで「伝わる」「伝わらない」を論じています。最後には「伝えたいことを伝えるには」どうすればよいかもかなり解りやすく(一般的とも言えますが)書いてあって、これはコミュニケーションには非常に大切なことと言えますので、ハウツー的にも使えると思います。
本書は全般的に平易な文で解りやすく書いてあり、オススメです。
いま気づいたのですが、以前にご紹介した以下の本と同じ著者でしたね。こちらもおもしろかったです。