昭和から平成にかかる我が国の経済的ピークと思われる時代に、『つるピカハゲ丸』というまんがが『コロコロコミック』等で連載されていました。
頭髪が3本しかない小学生「ハゲ田ハゲ丸」が貧乏・節約ギャグを繰り返すという、「頭髪が3本しかないハゲ」のかなりフォトジェニックなアイデンティティをおざなりにしているまんがで、その強引な内容を幼少期のわたくしは楽しみにして愛読しておりました。
強引なまでの貧乏・節約ギャグをハゲ丸は「つるセコ〜!」と表現しており、そのかわいそうな境遇を底抜けに明るく受容している姿に泣き笑いです。
三流会社に勤める父・ハゲ蔵の単身収入なのに練馬の一軒家における5人暮らしが成立しているということは、家族ぐるみでの反社組織とのつながり、あるいは脱税・横領といった違法行為も否定できません。そのうえでのあっけらかんとした「つるセコ〜!」には、表裏一体な闇を感じざるを得ません。
ただ、公園や人ん家の水を利用して「水道代ういたぜ〜!!!」等と笑っているハゲ丸にはさすがに閉口。「こうはなりたくないな」と幼心に思ったものです。
作者ののむらしんぼ先生も、中身がほぼ空になったインスタントコーヒーのビンに直接お湯を入れ「最後まで楽しむぜ! 違いの解る男!」みたいなことを言っているシーンがあり(セリフは違うかも)思わず閉口。「こうはなりたくないな」と幼心に思ったものです。
以降は極論ですが、時代が令和になり盛んに叫ばれ始めたESGとかSDGsとかって、要するに「つるセコ〜!」なわけで、社会全体が『つるピカハゲ丸』を標榜とし始めているとわたくしは考えます。
つまり、のむらしんぼ先生は30年後を見据え「中身がほぼ空になったインスタントコーヒーのビンに直接お湯を入れ『最後まで楽しむぜ! 違いの解る男!』」とやっていたということになります。先見性がすさまじい。(ざっくりはこういうことをやって「ていねいな暮らし」とかっていってマウントをとってくる人、さいきん見ませんか。)
ESGやSDGsで持続可能な社会は実現できるかもしれませんが、ゆとりや豊かさ、将来の展望を思う心の部分が持続可能なものとできるのかが、わたくしは心配です。ESGやSDGsを実現するため社会を営む人間が不自由や不便を強いられることとなり、そういった社会で人間が生き続けていきたいと思うか。
少なくともわたくしは、「こうはなりたくないな」と思っていたので。
それにしてもこの時代の『コロコロコミック』、いっぽうでは『おぼっちゃまくん』を連載していたので、多様性もあってすばらしいですね。
経済的な豊かさは多様性を受容しますが、多様性は経済的な豊かさを創出しない典型例だと思います。