コンタクトレンズの処方箋を出してもらうために眼科に行った。
待合室で本を読みながら、診察室から呼ばれるのを待つ。
「カトウさんカトウユリさん」
マイクを使っているのにめちゃくちゃ小さい音量でしかも早口だ。案の定、誰も診察室に向かわない。
「カトウさん! カトウユリさん!」
再放送で呼ばれたことに気づいたカトウがカバンに何かを詰め込みながら慌てて診察室に向かう。この音量では仕方ないですね。カトウは決して悪くないとわたくしも思うよ。
誰かが診察されているあいだは自分のことは絶対に呼ばれないので読んでいる本の内容も身に入るが、誰も診察されていないあいだは自分が呼ばれるかもしれないので耳を澄まさなければならず、本の内容もイマイチ入ってこない。
本を読みながらも、わたくしはすべてのヘルツを捕らえんとせんばかりに耳を澄ます。
受付のおねえさんたちの会話の方が、音量がでかい。
眼科に行ったのに、わたくしの聴力がすこしだけ鍛えられて帰った。