言語の本質を常に考えているわたくしですので、この本を手に取るのは自然なこと。
オノマトペを起点に言語の本質たるものを検討していく本書で、とくに興味深かったのは他国の言語の「音」から意味を推察する箇所。
たとえば、「ベトナム語の『メム』と『クン』で柔らかいことを表すのはどちらか?」という問いがあり、答えは『メム』だった。たしかに『メム』のほうが柔らかそう。
こういった「音」には全世界に普遍的な言語を超えた知覚のようなものがあり、つまりこのベースが「言語の本質」の一部にあたるという論説は、うなずくことしきり。
「コロコロ転がる」と「ゴロゴロ転がる」だと、「音」がちょっと違うだけだけど、浮かぶイメージがぜんぜん違う。
「転がる」だけだとその単語から具体的なイメージは浮かばないが、「コロコロ」がつけば小さく軽く丸いものが緩やかな坂を相対的にゆっくり移動するイメージが浮かび、「ゴロゴロ」がつけば大きく重く角張ったものが急な坂を相対的に早く移動するイメージがうかぶ。「どんなものが/どこを」転がるかを言葉で明確に指示していないのに、だ。
これだけの差を「音」がうみだすとすれば、わたくしとしてはもう「音こそが言語の本質だ」と言いたい。言ってもいい。
なお、本書ではそこまでは言っておらず、もっと丁寧に論じているので安心して欲しい。
オノマトペが言語にアイコン性をもたらし意味がうまれ、やがて論理(演繹・推論とか)を作り複雑化していく。
ことばの進化と人間の成長が一連的に書かれており、もともと興味があった「言語というもの」をさらに新鮮にとらえることができる一冊。オススメです。
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