背中に蛾

季節も進み、そろそろ虫もカオを出す季節ですね。
電車に乗っていて困るのは、突然の蛾です。

バサバサと蛾が飛んできて電車内が「うわ〜」みたいな状態になるとまだよいのですが、小さい蛾で、わたくししかその存在に気づいていない場合は、さてどうするべきか。
電車内でわたくしの前に立っていた高校生くらいの男の子の背中には小さい蛾がついていて、その存在に気づいているのはおそらくわたくしだけ。「背中に蛾が…」とも言えず、わたくしは蛾とじっと至近距離で対峙するばかりです。

男の子はドア前に立っており、駅に到着するとマナーを守りいったんホームに降ります。「このタイミングで蛾よ、どこかへ飛んでってくれ…」、わたくしは祈るような気持ちで男の子を見送ります。ここはマイナーな駅である「小菅駅」なので、そのドアからの降車はゼロでした。
男の子はすぐに乗車し、踵を返して背中をこちらに向けます。

ダメだ、相変わらず背中に蛾。蛾よ、空気を読んでくれ…。

やがて、電車はわたくしが降車する駅に着いてしまいました。わたくしは男の子の背中を見つつ、ホームへと降ります。
あっ、ここで初めて蛾がゆっくり、男の子の背中から頭髪方面へと移動し始めました。これからどうなるんだ…!

襟元から飛び立つのか!
頭髪の中に潜り込むのか!
どちらにしても、誰かはパニック状態になる!
ああ、やめろ…やめるんだ!

男の子も蛾も、お互い通常モードで行動をしているだけなのに、関係なく勝手に盛り上がっているわたくし。
この日のわたくしの最高潮は、ここでした。

電車内くらいしか面白いことがない日ってありますよね
電車内くらいしか面白いことがない日ってありますよね

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