家から外に出るときは、基本的にはトイレを済ませてからにします。
わたくしは過敏性腸症候群も患っているので、とくに外出時に長いことトイレに行けないことが想定されるときは、家を出る前のトイレタイムを長めにとります。まぁ、これでもりもりの方を過剰に出そうとしてしまい(いわゆる「ダイの大冒険」状態)、それが今回のように爆心地(*)を「終了」に追い込んだ遠因でもあるのですが。
よって、痔の手術の説明を受けに病院に行く際も、いつもと同じようにトイレを済ませて家を出ました。説明前に採血するとは聞いていましたが、それ以外はとくになにも聞いていませんでした。
「マツオカさん、ではこれから手術前の検査がありますので、このコップにお小水を入れて、手洗い場の下に置いておいてください」
人生初の、不意の排尿要請です。
「えっ、検尿ですか…出るかな…」
通常の健康診断では検尿があることはわかっているので調整が利くのですが、わたくしはこのようなサプライズ検尿(いわゆる「寝耳に尿」状態)には対応できていません。
「違法薬物使用の疑いをかけられてもないのに、急に尿を出せって言われること、あるんだ…」。わたくしはそう思い、病院の天井を見上げました。
トイレにこもり、検尿カップと対峙するわたくし。いくらがんばっても尿は出ません。情けなさで涙は出てきます。
「出ませんでしたって、正直に言おう」
看護師さんに空の検尿コップを差し出し、わたくしは「すいません、一滴も出ませんでした」と言います。
この発言のもつそこはかとない情けなさ、意を決して発言している34歳成人男性のたたずまい、すべてがかなしい要素で構成されています。
まだ入院してないのに、こんなにもかなしいことが多いなんて。
入院後のスケジュールやメニューを見ても、手術する部位が部位ですので、精神的にこたえそうなものばかりです。
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(*)爆心地…包み隠さずいうと、肛門のこと。