ドラゴンクエストのストーリーやセリフ回しに興味があり、それらに言及されているのかなと思い、この本を手に取りました。
内容はドラゴンクエストの作者である堀井雄二氏が学生だった頃の時代背景や、あるいはドラゴンクエストの各タイトルが発売された頃の時代背景と、各タイトルとの関連を綴ったものとなっています。また、わたくしは読んだことがないので詳しくは解りませんが、村上春樹氏の小説とも対比させて書かれています。
著者の方の考察が主だったもので、堀井雄二氏本人の取材やドラゴンクエストのゲームのストーリーへの言及はあまりありませんでした。また、古いタイトルについては多く書かれており、新しくなるにつれて書かれている内容は少なくなっています。論理的誤謬もわずかにあり、それらの点は少し物足りなく思いました。
わたくしが期待していたストーリーやセリフ回しを文学としてとらえるとどうか、ということより、そもそも物語性のなかったゲームの世界に物語性を(はじめて)持ち込んだのがドラゴンクエストである、ということが書かれてあり、たしかにドラゴンクエストは「文学」としてとらえることができる日本ではじめてのゲームだったのかもしれません。まんがのように、セリフだけで物語を展開したはじめてのゲームが、ドラゴンクエストだったのですね。
この本ではわたくしの期待していたことよりひとつ上のレイヤーでドラゴンクエストを解釈していて、その点はたいへん興味深かったです。